人生2周目〜ツイステの世界でやり直し〜⑳
第二十章〜優等生でなくても〜
帰り道、グリムは文句を言っていた。
「ケチー!!ツナ缶ぐらい!!」
「オンボロ寮に後、10缶ぐらいあるし。
まずはそっちを消費してから。」
「10缶も!?」
「グリム、ツナ缶1日5缶以上食べるし。
すぐなくなるよ。」
「…それは金の管理が大変そうだな。」
「そう、なんだよね…。」
学園でアルバイトとかして、金を稼ぐかと考えているとデュースが近づいて来た。
「ユウ、そっちの袋もつよ。」
「いや、さすがに…。」
悪いと言いかけたが、デュースは袋を持ってくれた。…なんか悪いな。デュースに袋全部持たせているし。
「重たい袋を持つコツがあるんだ。」
「え?そんなコツあるの?」
「ああ。タイムセールの時に母さんがとにかく買い込むから、毎回袋がメチャクチャ重くて。」
…この世界にタイムセールって言う概念あったんだ。
「ウチは男手が僕だけだったから、そういう力仕事は僕が全部…っと。悪い。僕ばかりしゃべっていた。」
「そんなことないけど…、お母さんのこと大事なんだね。」
「そんなことは…、俺は母さんを…。」
アレ?口調が変わった?
触れない方がいい話題かも知れない。
そんな事を考えていたら、デュースに生徒がぶつかって来た。
「あ〜!卵が!」
「くそ!6個パックがひとつ全滅だ!
ビニール袋ん中が卵だらけに…!」
…うん、最悪のパターン。
「お前ら昼に学食で俺のカルボナーラの
卵割った奴らじゃねーか。」
「こんにちは、ザコAくん。」
「ちげっえーわ!!」
「じゃあ、カルボくんで。」
「…もういいわ、それで。」
ザコBくんが出てきて挑発して来た。
「おいおい、またお前らかよ。
いい加減にー。」
デュースに耳打ちする。
「…挑発に乗ったらダメだよ。
彼らは、不満を晴らす為に敢えて挑発して
来ている。」
「…分かっている。
角から飛び出してきたのは先輩たちじゃないですか。」
「んだと?俺らのせいだって
言いてぇのか?」
「はい、卵弁償して下さい。
あと鶏に謝って下さい。」
あー、コレ大分デュース頭に来ているな。
まぁ、やばそうだったら止めよう。
「はぁ〜?卵ごときで大げさな。」
「…あ?」
ダメだ、こりゃあ。
デュースがキレていることも知らずに、
デュースを煽る不良達。
グリムを手招きして、呼んだ。
「…なんなんだゾ。」
「グリム、あのカルボくんに気付かれない様に足の辺りのズボンに火をつける事って出来る?」
「できるけどなんだってそんなこと…。」
「ツナ缶10缶。」
「!!分かったんだゾ!!」
グリムは、石像に隠れて、カルボくんの
ズボンを燃やした。
笑っていたカルボくん達だったが、燃えている事に気がついた。
「…なぁ、なんか焦げ臭くないか?」
「オイ!お前!ズボン燃えている!!」
「うわぁぁぁ!!」
「とりあえず水!水!」
呆然としているデュースの手を取って、
駆け出した。
「逃げよう。」
「へっ。」
カルボくん達が、騒いでいる隙に石像を通り抜けて学園の前までたどり着いた。
…やばい、疲れた。
「ユウ!?」
倒れそうになった俺をデュースを支えて
くれた。
「…ありがとう。」
デュースがおそろおそろ聞いてきた。
「…なぁ、なんでさっき…。」
「あのままじゃ、デュース殴るかなって
思ったから。」
「!!」
「ハーツラビュル生は、寮長に不満を抱えている。その状態で更に殴られたとなったら、不満は更に溜まるって思ったから止めようと思ったんだ。」
「…それにしては、火をつけるとかめちゃくちゃだぞ?」
「ハーツラビュル生同士で、戦うよりはマシでしょう?」
「…変わってないな、俺はあの頃から…。」
「へっ?」
「俺はミッドスクール時代とにかく荒れてて…しょっちゅう学校サボって毎日ケンカに明け暮れていた。」
…なんか、たまーに出る口が悪いのはその頃の名残かな。
「先生の名前は呼び捨て、ワルイ先輩とつるんでいたし髪の毛もメチャクチャ脱色していた。」
…あんまり想像つかないな。
「マジカルホイールで峠も攻めていたし…」
マジカル…ホイール?なにそれ。
ホイールって車輪って意味だし、この世界の車かバイク?
「魔法を使えないヤツに魔法でマウントを取ったりするどうしようもない不良だったんだ。」
「つまり、ザコだったと。」
「うっ!」
「…相変わらず、容赦ねーんだゾ。」
そうかな?
「でも、ある夜…、俺に隠れて泣きながら婆ちゃんに電話してる母さんの姿を見ちまったんだ。」
「それは…。」
「自分の育て方が悪かったんじゃないか片親なのがよくなかったんじゃないかって。」
俺は、そんな事言われた事はない。
デュースは、愛されていると思う。
「そんなわけねぇのに。
母さんはなんにも悪くねぇ。悪いのは全部 俺だ!」
…愛されているからこそ、こんなにまっすぐに育ったんだと思う。やっぱり俺とは違うな。
「だから名門ナイトレイブンカレッジから迎えの馬車が来た時すげー喜んでくれた母さんを今度こそ泣かせないって決めた。
俺は今度こそ、母さんが自慢できる優等生になろうって決めたんだ。」
…だからあんなに一生懸命だったんだな。
「…なのに、ちくしょう!」
「…さっきデュースは、なんにも変わってないって言っていたけど違うと思うよ。」
「えっ?」
「今、やってしまった事を後悔している。
本当に変わってなかったら、怒りのまま殴ろとした事を後悔しないし、邪魔した俺を殴るハズだよね?」
「…それは。」
「でもしなかった。」
「充分変わっているんじゃない?…後悔するって事はさ自分のダメな場所を理解しているから変われるって事だよ。」
「それによぉー、全部我慢するのが優等生なのか?」
「我慢し過ぎても、精神を病む。
…自分に嘘をついて生きているから。
それに俺も優等生じゃないよ?命すぐ投げ出すし、薬草棚から少しだけ拝借するし。」
デュースは、笑った。
「…確かに、ユウも問題児だな。
少しぐらい優等生じゃなくてもいいよな。」
そう言ってデュースは、笑った。
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