人生2周目〜ツイステの世界でやり直し〜⑮
第十五章〜ハートの女王〜
昼食の時間になったので、
お昼をとる事にした。
グリム、黙っているけど…。
流石に騙したのはー。
「ふわぁ〜!美味しそうなものがいっぱい
なんだゾ〜!」
…凄い元気じゃないか。
「どうかしたんだゾ、ユウ?」
「…なんでも。
とりあえず俺はオムライスを
食べたいかな。」
「とっと行かないと、
売り切れるんだゾ!!」
だよね、凄い人だし。
グリムが前を見ていなかったのか、
ぶつかってしまう。
するとー。
「あ〜〜〜っ!?オイテメェ!
お前がぶつかってきたせいでパスタの温玉が
崩れちまったじゃねぇか!」
それは大変だ。
「ごめんね、温玉さん。」
「そっちじゃねーぇよ!!」
騒ぎを聞きつけて、エース達も来てくれた。
「なんかあったワケ?」
「グリムがぶつかって、温玉さんが崩れたから温玉さんに謝ったんだけど、なんか怒られちゃった。」
「それは、分からないな。
温玉さんには、しっかり謝ったと
言うのに。」
「天然×天然とかマジ勘弁…。」
「オイ、さっきから!態度がなってねーな!
ちょっと裏こいよ!」
うわー、テンプレのセリフ。
「テンプレ過ぎて…、もう少し考えて発言した方がいいのでは?」
どうやらその言葉に、堪忍袋の尾が切れた様でテンプレのセリフを叫びながら勝負を仕掛けてきた。デュースが焦りながら止めて
きた。
「せ、先輩。校則に魔法での私闘は禁じると…。」
アレ?今朝はケイトくんと戦っていたけど。
アレはノーカンか?
「でも、今朝はケイトくんと戦ったよね?
アレは?」
「ハーツラビュル寮のルールを破った者が
いたからこその処置で、ノーカンだろう。」
…成る程。
「なーに、ごちゃごちゃ言ってんだ!!」
「とりあえず、ザコA、Bくんを倒そう。」
「言い方!!」
「オラァ!!」
怒りのままに攻撃しているし、攻撃が分かりやすい。
「…分かりやすな。」
「怒っているからだと思う。」
「楽勝なんだゾ!!」
これは別に作戦とか飛ばさなくてもー。
「はーい、そこまでね。」
「ま、あんまり暴れ過ぎてんのを見逃す
のもな。」
ザコAくん達の顔が真っ白になった。
「ふ、副寮長!この事は!!」
「まぁ、今回は大目に見てやるよ。」
「あ、ありがとうございます!」
そう言って、ザコAくん達は消えていった。
「やっほー!朝ぶり?エースちゃん達!」
「ケイトくん。…隣は…。」
知っているけど、知らない振りをした。
「ハーツラビュル生3年で、副寮長を任されているトレイ・クローバーだ、よろしくな。」
「よろしくお願いします、トレイさん。」
「そんな事よりハラ減ったんだゾ〜!!」
「ははっ、悪いな。
せっかくだし、一緒に食べようか。」
トレイさん達と、昼飯を食べている際に気になる事があったので聞く事にした。
「…ハーツラビュルで、なにか問題でも?」
トレイさんは、ケイトくんと楽しくおしゃべりしていたがピタリと止まった。
「…どうしてそう思うんだ?」
「朝、ハーツラビュル寮に向かう前に
寮長に罰則を食らったと言う生徒に絡まれた。そして、今の生徒もハーツラビュル生だ。偶然にしては出来過ぎでは?」
トレイさんは、溜息を吐いた。
「ユウ、だっけ?」
「そうです。」
「厄介なタイプというか、ケイトに話を聞いていた通りだわ。」
「ありがとうございます。」
「…嫌味も通じないとなると、こりゃあ
大物だわ。」
「…詳しくは、話せないがー。」
「恐らく、寮長に不満を持っている人が暴れているって所でしょうか。」
「!!」
なんとなく想像出来る、厳し過ぎるルール。
そんなのにずっと縛られていたらー。
「…厳し過ぎるルール。人は、そんな物に
ずっと耐えられる程強くありません。
機械じゃありませんから。その一部が今回の騒動なのでしょう。」
「…嫌な奴だな、アンタ。」
「どうも。前にハーツラビュル寮のルールは
絶対と言っていましたが、もう少し緩く出来ないのですか?」
「ま、無理だな。」
「大体、「ハートの女王の法律」ってなんなのさ。」
エースが、ブスッとしている。
首輪を嵌められたからか。
トレイさんは、ハートの女王の法律について話してくれた。
「伝説のハートの女王の伝説については、
お前たちもよく知っているだろう?」
…よかった、レオナさんに聞いていて。
規律を重んじ、厳格なルールを作る事で変な奴らばかりの不思議の国を治めていた
だっけ。…不思議の国のアリスの女王様だけどやっぱり違うな。
俺の知っている女王様って自分勝手な
イメージだし。
「そんなハートの女王をリスペクトして我がハーツラビュル寮生はハートの女王のドレスの色である赤と白の紋章をつけてハートの女王の作った法律に従うのが伝統ってね!」
伝統なら、ルールは緩く出来なくてもしょうがないか。…でも。
「伝統をどうこう言うつもりはありませんが、厳し過ぎても「この!独裁者が!」って言う人が出て来てもおかしくない。そう言う人を減らす為にも、少し甘くみても…。」
「…どれくらい厳しく伝統を守るかは、
寮長によって違う。」
「確かに前にも、言っていましたね。」
「前は、ゆるゆるだったんだけどね〜。」
「今の寮長は真面目と言っていましたね。そのため、ルールを守ろうとしているとしている所でしょうか。」
「…うん。」
ケイトくん達の顔が曇った気がした。
今回の騒動も、厳しい過ぎるルールのせい。
…ハーツラビュル生を見逃したのも、
きっとー。
「見逃したのも、ハーツラビュル生の不満を溜めすぎない為ですね。…寮長の不満が溜まったハーツラビュル生が暴れる度に、上手くコントロールしているのがケイトくん達だ。」
「…そんな事ないと思うけどな〜。」
「あると思います、不満を晴らす場所が無ければそれは溜まって行き、やがて殺意に変わる。…寮長にまだ被害が出てないのは、ケイトくん達の手腕でしょう。」
「殺意、か…。」
「そ、1人ならまだいいけど、大勢で来られたらさすがの寮長でも抑えられないよね?」
ハーツラビュル生は、ある意味軍隊に似ていると思う。厳しいルールによってなりたっている所が。確かにルールは必要だ。
ルールがなければ、無法地帯になるだろう。
だが、ハーツラビュル生の寮長はやり過ぎなのだ。軍隊を崩さない為には内部分裂させない方がいい。だが、今のハーツラビュルはいつ内部分裂してもおかしくない状態だと言える。簡単に言えば、脆いのだ。
「…あ〜!もうこの話題ヤメ!!」
ケイトくんが話題を無理矢理止めてきた。
…まぁ、無理にする話じゃないな。
「…すいません、楽しい食事の場でする話
ではなかったですね。」
「あはは〜、いいよ。
それにしても、ユウちゃんさ…。」
ケイトくんが、まじまじと見てくる。
「闇の鏡に寮選ばれなかったらしいけど、
選ばれていたらオクタヴィネルかスカラビアに選ばれていたんじゃない?」
「へっ?」
「いや、寮ごとにもキャラが定まっていて
ユウちゃんってタイプ的にこの2つじゃ
ない?」
「あー、分かるわ。」
「オクタヴィネルとスカラビアは、頭脳派で筆記テストはデッドヒートしているし。
ユウちゃん、筆記テストとか、得意そう
だし。」
まぁ、否定はしない。
「でも、他の寮の可能性もー。」
「サバナクローだけは、ないんじゃない?
あそこ肉体派だし。」
「ないですね。」
「返答早ッ!!」
「この世で1番憎むべきモノ、
それは運動です。」
「なんだろうな?この既視感…。」
「ユウちゃんは、オクタヴィネル一択
かも…。」
「せっかくだし、他の寮のキャラを教えて
おくか。」
知って置いて損はないか、俺が知っているの
寮の特徴とかそこら辺だし。
「で、ポムフィオーレは美に対しての意識が強い。」
「なんか手袋とか投げつけてきそうな雰囲気ありますもんね。」
「どんな!?…後は魔法薬学や呪術がー。」
「部屋に鍋とかあって、毒薬とか作ってそうですもんね。」
「だからどんな!?話が逸れたね。
イグニハイドはハーツラビュルと正反対。
ちょっと、暗いよね〜。」
「なるほど、俺も暗いしここもー。」
「ユウちゃん、暗くなくない?
ハッキリと言うタイプだし。」
「…。他は?」
いや、まぁ知り合いがいない分、
開放的になっている所はあると思う。
その影響で昔の性格に戻っている面があるのは否定しない。
でも、そんなに酷かったかな?
「後、イグニハイドは魔法エネルギー工学とかデジタル系に強いんだよね。」
また、知らない単語だ。
魔法エネルギー工学ってなんだろう?
…ま、聞いても分からない可能性あるな。
名前から察するに化学系だし。
「最後は…なんだっけ?」
「ディアちゃん寮です。」
「…名前、途中から覚えられないから
略しただろ?」
「まぁ、はい。」
「分かるなぁ〜。ちょっと独特な名前だよね。正解は、ディアソムリアね。
なんつーか、超セレブつーの?」
「学校行けている時点で、セレブだって思います。」
「まぁそうなんだけどー、
ディアソムリアはー。」
「呼んだかの?」
「こんにちは、ユウです。」
「ウワサは聞いているぞ、ユウとやら。
わしはリリア・ヴァンルージじゃ。
よろしく頼む。」
「よろしくお願いします、リリアさん。」
グリム達は、俺の対応に突っ込んでいた。
「だから!なんで!普通に対応しているんだよ!!」
「神経太いとか言うレベルじゃないわ〜。」
散々な言われようだ。
「ハハハッ!!なんじゃ?お主想像より
面白いな。マレウスと合わせてみたく
なったわい。」
「えっと…。」
「マレウス・ドラコニア。
わしらのトップじゃ。」
ピーちゃんが、ディアソムリアは撮るのは
苦戦して一部しか情報が得られなかった
って言っていたけど、情報を得れる時点で
有能だと思う。
「マレウスさんか…、会ってお話してみたいですね。」
ざわめきが広がった気がした。
「そんなに?」
「あやつは、有名人だからな。
じゃが、お前の様なタイプは初めてじゃ。
恐れるのではなく、会ってみたいとはー。」
リリアさんが黙っていた。
うーん、なんか選択肢間違えた?
「あのリリアさん?」
「…すまないな、世の中も捨てたもんじゃないと思ってな。」
「?」
益々分からない。
「食事中、邪魔したな。それではの。」
それだけ言うとリリアさんは自分の席に戻って言った。
「ぷっはー!!こっわ!!
つかー!!お前、よく平気だな!?」
「なんか独特だけど、面白い人だよね。
リリアさん。」
「そんな感想出てくるのユウぐらい
なんだゾ!!」
マジ…?
「まぁ、ユウの図太過ぎる神経の話は置いといて、ディアソムリアは魔法全般に長けた
優秀な生徒が多い。」
今、失礼な事言われた気が…。
「マレウスくんは正直、ヤバヤバのヤバだよね。つか、それ言うならウチの寮長も激ヤバなんだけど〜。」
なんだろう?この親バカ感。
「うちの寮長は凄いんです!」って自慢している感じにも聞こえなくもない。
「ほんっとにな!タルト一切れ食ったくらいでこんな首輪つけやがって。
心の狭さが激ヤバだよ。」
うーん、こっちはケイトくんの会話の真意を読み取れてない気がする。
ケイトくん、寮長の事自慢してる感あるし。
…エース、本当に謝る気ある?
すると、冷たい声が聞こえてきた。
「ふうん?ボクって激ヤバなの?」
あ、めちゃくちゃ怒っている。
「エース、謝って」そう言おうとしたが、
気が付いてないみたいで暴言は止まらない。
「そーだよ。厳格を通り越してただの横暴
だろ、こんなの。」
…遅いけど、言ってやるか。
「…後ろの正面だーれだ?」
「はっ?」
そう言いながらエースが振り向くと、
めちゃくちゃ冷たい目をした寮長がいた。
「でぇっ!寮長!」
…初めて聞いたよ。そんな声。
すぐさまケイトくんは、サポートに回る。
「おっと、リドルくん。
今日も激ヤバなぐらいかわい〜ね♪」
…恐らく、今までもこうして寮生達を守ってきたんだろな。
「ふん。ケイト。あまりおしゃべりが過ぎるとその回る口ごと首をはねてしまうよ。」
「…ここが血塗れになるのは、勘弁してほしいですね。」
「なんだい?…お前は!!」
どうやら俺の存在に改めて気が付いた様だ。
「はじめまして、リドル寮長。
俺はユウです。改めてよろしく
お願いします。」
なんか、プルプル震えているな。
「…どうしてここに。」
「まぁ、学園長に改めて学生として
ここで勉強する許可を貰ったので。」
「…まぁいい。
余所者がハーツラビュルに口を出さないで
貰おうか!」
「出しませんよ、ただここは公共の場。
そういった場所で、血生臭いのは
見たくないってだけです。」
寮長は、舌打ちしつつ刃を収めてくれた。
「…よく口が回るヤツだな。」
「どうも。」
寮長は、エースに向き合って言った。
「…反省しているなら外してあげようと
思ったけどー。」
「えっ。」
「先ほどの発言からしてキミに反省の色があるように見えないな。しばらくそれをつけて過ごすといい。心配しなくても1年生の
序盤は魔法の実践より基礎を学ぶ座学が
中心だ。」
…まぁ、魔法が使えなくても死なないし。
エースは、どうだか知らないけど。
「魔法が使えなければ昨日のような騒ぎも
起こさなくて、ちょうど良いだろう?」
アレ?寮長ってもしかしてー。
「さぁ、昼食を食べ終わったらダラダラしゃべってないで早く次の支度を。
ハートの女王の法律・第271条
『昼食後は15分内に席を立たなければならない』ルール違反はお分かりだね?」
やっぱり、寮長はー。
エースは、文句を言っていたが寮長に怒られたので、ちゃんとした返事をしていた。
トレイさんがエースのフォローに回る。
「まぁまぁ、俺がちゃんと見張って
おきますから。」
「…フン、キミは副寮長なんだからヘラヘラしてないでしっかりしてよね。」
うん?寮長の雰囲気が変わった?
今までのキツイ言い方と比べると、優しいというかー。
「ボクはハートの女王の法律・第339条
『食後の紅茶は必ず角砂糖を2つ入れたレモンティーでなければいけない』を守るために
購買に角砂糖を買いに行かなきゃならない
からこれで失礼。」
…何、そのルール。
歴代の寮長が勝手に付け加えたんじゃない
かってレベルで分からないのあるな。
寮長がボソッと呟いた。
「全く、シュガーポットに角砂糖を
切らすなんて重罪だよ…。」
やっぱり…。
「寮長、一つだけいいですか?」
「なんだい?ボクは今ー。」
「その生き方、息苦しくないですか?」
「!!な、なにを…。」
「俺は、あなたはただの横暴な悪だって思ってません。ハーツラビュルが纏まっているのもルールのおかげだ、けどそれ以上にあなたはルールに縛られている。…恐らくハーツラビュル生以上に。」
「!!」
「あなたは規律を乱し、ルールが守れないのが許せない。だから、凄い真面目だって
思います。もう少しぐらい肩の力を
抜いてもー。」
「キミになにが分かる!!」
寮長は、ハッとした後に踵を返して小さく
呟いた。
「…急ぐから、これで。」
「…オメーが言いたい事、よく分からなかったんだけど。」
「うん、つまりね。
寮長ってハーツラビュル生以上に苦しんでるじゃないかなって思ったんだ。」
「…ただの横暴のヤツだって思ったケド。」
「感じ方は人それぞれだよ。
…でも俺は寮長はルールを絶対に守ろうとして追い詰められている気がした。
呟いていたのが、『シュガーポットに角砂糖を切らすなんて重罪』だし。もっと気楽に考えていれば、後で角砂糖を買うとか自分の中では角砂糖入れたからみたいに誤魔化して飲む事だって出来る。でも、してないんだ。」
「…それは。」
デュースが心配そうな顔をしていた。
「心配だよね?いつ心が壊れてもおかしくない。…だからケイトくん達。寮長の事お願いします。」
ケイトくん達は、困った顔をしながら微笑んだ。
「…参ったな。」
「なにがです?」
「いや?寮長の事心配するヤツは少ないからさ。…なんか嬉しいな。」
「お願いしても?」
「任せてよ〜!!」
「出来る範囲で、サポートする。」
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