人生2周目〜ツイステの世界でやり直し〜(まとめ1)
※ツイステ2次創作のプロローグの部分を加筆、修正して纏めたものです。
プロローグ
〜Welcom to the Villains’ word〜
頭を思いっきり殴られる。
ドカッ!
痛い。
「オイオイ、やり過ぎ。」
「別に良くね?なんにも言わないし。」
言わないじゃない、言えないだ。
「コラー、お前ら!!」
「ヤベー、上川だ!!」
上川隆也、体育の先生で声が大きい。
俺に近付いてくると、
「何も、なかったよな?」
笑顔でそう言ってきた。
…まただ、また。
でも、何も出来ない。
だから、コックリと頷いた。
「よし!帰りなさい。」
上川と分かれて、教室に戻るとカバンが無い。多分アイツらが持って行ってのだろう。
これでは帰れない。
そう思っているとー。
茶髪なチャラそうな少年が意地悪そうに
言って来た。彼は斉藤蓮と言って、俺の幼馴染で親友だった。…昔は。
「アッレ〜、カバンないの〜?困ったね?」
「…。」
「土下座したら、カバン返すけど?」
家に帰るのが遅いと、叔母さんに何を言われるか分からない。両親は他界しており、親戚に引き取られたのが俺だ。
だから、土下座する。
「…返して下さい。」
「うっわ!マジ?プライドとか無いわけ?」
「必要なら、服も脱ぎます、だからー。」
俺の態度にイライラしたのか、
「…マジありえんわー、帰る。」
それだけ言ってカバンを投げ付けて返してくれた。それを見た取り巻きたちが不満気に蓮に言った。
「アレ?いいの?」
だが、そんな取り巻きに対して蓮はイライラを隠さずに睨み付けて言った。
「いいって言ってんだろ!!」
あまりの剣幕に取り巻きたちはビックリして、黙って着いて行った。
取り残された俺は、消えた幼馴染を見て
「…俺の所為、だよな。」
そう呟いた。
蓮と俺は昔はよく遊んでいた。…俺の両親が他界し親戚に引き取られるまでは。親戚は、俺の両親と比べると格式が高く無かった。それを蓮の両親はあまりよく思わなかった。蓮の両親は、格式の高さを重視していたから。だから言った。「もう仲良くしない方がいい」と。当然蓮は、怒った。それから俺は蓮を無視して、いじめが始まった。だからこれも全部俺の所為で。電車に乗りながら、家の事を考えると気が重い。…俺の居場所は何処にも無い。
家に帰ると、叔母さんに怒られた。
「遅かったじゃないの!」
「…すいません。」
チラッと叔父さんを見ると、新聞を読んでいて何も言ってこない。興味無いって事か。
「聞いているの!?
貴方の帰りが遅いと、周りから…。」
「…すいません、明日ミニテストがあるので…。」
「ちょっと!!」
叔母さんの声を無視して、部屋に篭った。
やっと、一人になれた。
「ふぅ、やっと一人に…。何しようかな?
映画でも観るか。」
そう思って部屋を漁ると、ディズニーの映画があった。
「…懐かしい、昔よく見たな。」
どれにするか悩んでいたが、不思議と目に
止まった存在があった。
『ふしぎの国のアリス』ー、これにするか。そう思って、DVDを再生する。
すると、様子が変だ。馬車も出て来るし、
鏡も出て来る。あれ?『ふしぎの国のアリス』ってこんな話だったか?鏡なんか出てきてないし…、鏡が印象に残っているのって『白雪姫』だしなぁ。そんなことを考えていたら声が聞こえて来た。
「闇の鏡に導かれし者よ、汝の心の望むまま、鏡に映る者の手をとるがよい。」
やっぱり変だ…、それに何を言っているのか分からないし、どうしたらいいのかも分からない。もしかして、DVDを見ている間に寝てしまったのか?だからこんな変な映像を見ているんだな。『ふしきの国のアリス』を観ていたハズなのに、トランプ兵が夢に出て来ないのは変だけど。ディズニー関係の映画で最初は『白雪姫』にするか悩んでいたし、その影響で夢に鏡が出てきたのかもな。夢だし、この声に乗ってみるか。目が覚めたら、
忘れてるだろうし変なことをしても大丈夫。
とりあえず謎の声が言っている手を取るってことをするか。
うわ…、鏡に映っているの全員
ヴィランズじゃん。
『混沌なる王国を法律で統治した、
厳格な女王。』
アレ?俺が知っているハートの女王と違う?
厳格って言うより、我儘って感じだったし。
夢だから?色々歪められているのか?でもあるのか?そんなこと?とりあえずこの変な夢から覚めよう。その為には鏡に映るヤツの手を取らないとな。
そう思って、鏡を覗き込んだ。
色々見てみたけど、百獣の王にするか。
努力って部分は、共感出来るし。
それに俺、ライオンキングだと
スカー派だし。
謎の声がまた聞こえて来た。
「闇の力を恐れるな。」
闇の力ってなんだ?
「さあー力を示すがいい。」
何を言ってー。
場面が切り替わり、不思議な空間に出る。
化け物とローブを着た人達が戦っている。
夢だと知り合いが出て来ることがあるけど、あのローブを着た人達は知らないし、見たこともない。それに化け物に向かって不思議な力で戦っていた。アレは…、なんだ?
昔絵本で見た魔法みたいだ。そんなことを考えていた為か夢だと考えていたハズなのに、思わず口から声を出していた。
「何…、あれ。」
どうやらこっちの声は聞こえてないらしい。
化け物に負ける。
場面がまた切り替わる。
鏡の前に立ったおり、鏡から声が
聞こえてくる。
「今まで、ずっとお前が喋って…。」
だが、鏡は俺を無視して話を続けた。
「私に 彼らに 君に 残された時間は
少ない」
なにを言っているんだ?夢だからしょうがないけど、突っ込み所満載だって。俺はリアル寄りの夢を見ることが多いからこんなファンタジーな夢を見ること自体あり得ないけど。
それにしても、曖昧過ぎるって。
主語を言って。
「主語を言えー!!」
そう叫びながら起きた。
…なんか久しぶりに叫んだ気がする。
やっとあの悪夢から解放されたかと考えていたら、上に重たい物が乗っていることに気が付いた。家にいるデブネコの重さじゃないし、羽毛布団の重さじゃない。
なんていうかー。なんか蓋がある気がする。閉じ込められている?
…もしかして俺死んでコレ棺桶とか…。
嫌な予感を振り払う為に蓋をなんとか開けると、謎の声がした。
「こうなったら…奥の手だ!
ふな〜〜〜〜それっ!」
「ハッ?」
さっきからいつもなら言わない様なことを口走っている気がするが、それぐらい異常な事が起きている気がする。狸が喋っているし、炎を吹いているし。まさかまだ夢を見ているとか?寝起きで寝ぼけていて夢を見ている。きっとそうだ。じゃ無ければ、こんな変なこと起きるハズはない。そう思って左頬を
思いっきりつねったがー。
「いたい…。」
こんなに痛いってことは、夢じゃないのか?
「さてさて、お目当ての…。
ギャーーー!!!!」
狸は、今更俺の存在に気が付いた様で騒ぎ始めた。
「失礼な狸だなぁ。」
「誰が狸じゃーーー!!!オレ様はー。」
狸じゃないのか…。ならなんなんだろう。
丸いし、喋る…。アレだな、アレしか
思い付かない。
「よろしく、ドラえもん。」
「誰がドラえもんじゃー!!
グリム様なんだゾ!」
…ノリがいい狸だ。
「まあ、いい。そこのニンゲン!」
狸にこんな偉そうな態度取られたの初めて。名前を名乗られたし、こっちも名乗るか。
「あ、俺の名前はドラえもん。」
「さっきと同じだし、もっとマシな名前つけんか!!」
間違えた、ずっとドラえもんとか考えていたから自分の名前を間違えて名乗ってしまったな。それにしても…。
「やっぱりノリが良い狸だなぁ。」
「誰が狸じゃい!!調子が狂うんだゾ…。
とにかく服をよこすんだゾ!」
狸が餌を漁るために畑を荒らす話はよく聞くけど、服を奪う為に脅してくるのは初めて聞いたな。というよりも、今日初めて経験すること多すぎるんだけど。
まぁ、服ぐらいならー。そう思って、服を脱ぎ始めたらグリムが焦り始めた。
「な!?やめるんだゾ!!」
「欲しいんじゃなかったの?」
「ぐっ!もっと羞恥心とか…。」
「無いよ。」
虐められていたし、恥とか全部捨てた。
「ううっ〜、やりにくいだゾ!!」
そんな事をしていたらー。
「ああ、やっとー、って!何をしてんですか!?服を着て下さい!!」
改めて見ると、制服を脱ぎかけでなんか
変態臭いな。…この人も仮面付けているし
それぽいけど。
「…見苦しい所をお見せして、
すいません。」
「まぁ、いいです。ダメじゃありませんか。勝手に扉から出るなんて。」
制服をきちんと着たら、怪しい男性はホッとした様な顔をしながら話を続けた。
「それに、まだ手懐けられてない使い魔の
同伴は校則違反ですよ。」
分からない単語がポンポン出てくる。
扉?使い魔?なんじゃそりゃ。
「離せ〜!オレ様はこんなヤツの
使い魔じゃねぇんだゾ!」
グリムは、怪しい男性に首根っこを掴まれながら暴れていた。こうして見ると猫ぽいな…。グリムのことは一旦置いといて聞いとくことがあるハズだ。
「使い魔って何ですか?」
怪しい男性はグリムを押さえつけようと必死だったが、俺の言葉にポカンとしていた。
「ハイハイ、反抗的な…、今何と?」
聞こえなかったのか?
なら、もう一度言うか。
「いや、だから使い魔って何か知らなくて…。」
怪しい男性は、動揺しながら聞いてきた。
「貴方、此処に一体どうやって…。」
どうやって?そんなのこっちが聞きたいぐらいだ。なんか気が付いたらいたし…。DVD見ていたら変な声がしてくらいしか記憶にない。
「DVD観ていたら…。」
そう言った途端に距離を詰めて来た。
…そんなに驚くこと?
「あり得ません!馬車のお迎えは!」
馬車?あー、アレか。最初は『ふしぎの国のアリス』ってこんな話だっけ?なんか随分とリアルに感じる映像だなって考えていたな。だってアリスって可愛い感じなのに、馬車は立体感あり過ぎて違和感を感じたし。
「なんかリアルな映像だなって…。」
怪しい男性に盛大に突っ込まれた。
「どんだけ天然ですか!?貴方!?」
…そういえば、蓮にも天然過ぎて救えないって言われたな。
怪しい男性は気を取り直して、ここが何処
だか説明をしてくれた。
「とにかく軽い説明をすると、ここは名門魔法士養成学校ナイトレイブンカレッジ。」
随分と美味しそうな名前だな。料理人を育てる学校か何かか?
「ナイトレイブンカレー?」
違ったらしく、怪しい男性には怒られて
しまった。
「どうしたら、カレッジとカレーを聞き間違えるんですか!!」
疲れた様に言って来た。
どうやらどこかに案内してくれるらしい。
「貴方が正当な方法で来たのでは無いと知ったので、しょうがない。ついて来なさい。」
ずっと怪しい男性だと面倒だし…名前で呼ぶか。仮面で…ステッキ。うん。これは変態。
「分かりました…えっと、変態。」
どうやら呼び方が不満だったらしい。
「貴方!名前が分からないからって!
もっとマシな名前あるでしょう!!」
ごめん、変態以外頭に候補出て来なかった。
「それで?名前は?」
「くっ!いいでしょう!
私、優しいので!!」
こんなキレている奴は優しく無いと思うが、言うと話が拗れるので言わなかった。
「学園長のディア・クロウリーです。」
「よろしくお願いします、学園長。」
学園長は、心底安心したように呟いた。
「…良かった、変な渾名付けられなくて。」
「?」
「行きますよ。」
着いて行くと辿り着いたのは、鏡がある部屋だった。
「…ここは。」
学園長は俺の反応的に見覚えのある場所と
判断をし、質問をしてきた。
「見覚えは?」
「…一応。」
変な鏡に導かれて、ここまで来たのだから。
学園長は、鏡の前に集まっている集団に大きな声で話しかけていた。
「すいません!皆さん!!」
「学園長!どうかしましたか?」
よく見ると、ローブだらけだ。
つい、ボソっと呟いてしまう。
「グリムの親戚?あの猫耳の人。」
「んな訳ないんだゾ!!」
途端に騒ぎが大きくなる。
「アイツ、死にたいのか?」
「バカだなぁ。」
猫耳の男はそれにピクリっと反応し、
近づいて来た。
「オイ、テメェ、いい度胸だなぁ。」
ギロリッと睨まれたが、いつもの虐めよりはマシだ。普通に流し、挨拶をする。
「どうも、それ猫耳ですか?
可愛いですね。」
また騒ぎが大きくなる。
「アイツ、また!!」
「コエ〜!!」
だが、猫耳の男は睨むのを止めてくれた。
「ハッ!テメェ、睨まれても怯まねぇのかよ?気に入った!名前は?俺はレオナ。」
「俺?俺は、神代ユウです。」
「ふーん、変わった名前だな。」
「そうですか?よろしくお願いします、
レオナさん。」
「そこは、レオナ先輩だろうが。
まぁ、テメェに先輩呼ばわりは気持ち悪いからさんでいいわ。」
更にざわめきが広がる。
「アイツ!レオナさんと普通に!!」
「無敵か!!」
「…。」
学園長が何か考える様な顔でこちらを見つめて暫く黙っていたので、少し不安になり声を掛ける。
「あの、学園長?」
すると、いきなり大きな声で言い始めた。
「私、決めました!」
「うわっ!」
普段あんまり声を出さない方なのだが、学園長のクソデカボイスと動きに驚き声を出してしまった。…恥ずかしい。
そんな俺の気持ちなどは無視して、更にテンションを上げて喋っていた。この人のテンションについて行けない…。
「貴方の入学を特別に許可します!」
「はい?」
入学って何の話だ?混乱していたら、身長が小さく髪が赤いのが特徴的な少年が学園長に聞いてくれた。助かる。なんか話がどんどん進んで行くから…、頭パンク状態だし。
「ああ、ローズハートくん。実は彼は正当な方法で入学して無いのです。」
ローズハートと呼ばれた少年は信じられない様な物を見る様な目で俺を見た。さっきから色々な人から変なヤツみたいな感じで見られているな、俺。
学園長は、何か言いたそうなローズハートさんに話の続きを聞く様に言い、ローズハートさんはそれに渋々従った。
「その為、此方に連れて来て適正を図ろうとしたのですが…。」
「何か問題でも?」
「彼がキングスカラーくんと上手くやっているのを見て、学園の治安維持に努めさせようと思いまして。」
学園長がそれを言った途端に黙っていることは出来なくなったらしい。ローズハートさんは俺を激しく睨み付けながら、言った。
「何を言っているんですか!!彼は恐らく、この学園の適正が無い!ならー!!」
ローズハートさんって随分とハッキリと言う子だなぁ。というか適正ってなに?なんも分からないでここに来たんだけど。学園長は、もっと説明すべきだと思う。そんなことを考えているうちに話はどんどん進んで行っていた。
「ですから、その使い魔のー。」
グリムが使い魔と言う言葉に反応し、暴れた。暴れるグリムを抑えながら、使い魔って結局なに?ということを考えていた。学園長は、自分の失言を誤魔化す為に早口で次の話に移った。
「コホンッ!グリムくんと二人一緒になる事で一人前とし、入学を許可します。」
だが、そう簡単に引き下がるローズハートさんでは無かった。
「場所は!!」
「あるでしょう?廃屋が。」
学園長が場所を言った途端にローズハートさんは俺の顔を見ながら、悪そうな顔をした。
「良かったな、寝る場所はあるぞ。」
学園長に案内された場所はー。
廃墟と呼んでもいい見た目をしていた。
「…なんか、幽霊とか出そうだね。」
グリムは待ちきれないと言った風に、とっとと中に入る様に進めて来た。確かにずっと外であれこれ考えていても仕方がないし、
さっさと入るか。
入ったら、中にいたのはゴースト。
つまり幽霊である。
「ふみゃぁぁーーー!!」
「よろしく。」
「なんでビビってないんだゾ!!」
グリムはすっかりビビッてしまったらしく、俺の足にしがみついて来た。…やっぱり猫に近いな、コレ。なんでビビってないか…か。そりゃあ俺がー。
「人の方が怖いからかな。…悪意とかさ。」
「?」
グリムは、よく分かって無いみたいだった。
とにかく部屋に行くか。ゴーストに部屋を案内してくれる様に頼んでみた。楽しげにゴーストと会話する俺を見てグリムは、突っ込んで来た。
「オメーも、ゴーストと普通に会話してんじゃねーんだゾ!!」
ゴーストに案内された部屋は、意外にも快適だった。
「もっと、酷いかなって思ったけど意外にいけるな。」
グリムが呆れた様に言った。
「怖い物なさそーなんだゾ。」
向こうにいた時は、怖がってばっかりだったし。だからグリムにそのことを伝える。
「怖い物なら、沢山あるよ。」
グリムは疑い深い目をしながら、こっちを見てきた。
「本当か?」
あんまり表情に出さないから、分かりづらいけど…。俺、本当は怖がりなんだ。だから正直に頷きながら言った。
「うん。」
グリムはそんな俺になにかを感じたのか言ってくれた。
「しょがねーな!なら、そんな弱虫な子分を守ってやるんだゾ!!」
「…子分になるつもりは無いけど、ありがとう。」
グリムは、そんな俺の返答に対して憤っていた。
「なんだとー!オメー、本当一言多いヤロウなんだゾ!!」
それにしても…埃が酷い。寝室だけは綺麗にしておくか。
「掃除するから手伝って。グリム。」
グリムは、不満気に言った。
「断るんだゾ!1人でー。」
「手伝ってくれたら、1つだけなんでも言うこと聞いてあげるよ。」
「本当か!?なら、ツナ缶を食わせろ!!」
「そんなんでいいの?」
「いいんだゾ〜!ツナ缶〜!!」
なんてチョロいヤツなんだ。
数分したら、寝室は綺麗になったのでお風呂に入って寝ることにした。お湯が出なかったらどうしようとか考えたがそんなことはなかったので、安心した。寝室のベッドに入ろうとしたら、グリムが声をかけてきた。
「おやすみなんだゾ!ユウ!」
「!!」
久しぶりに名前なんか呼ばれたな。
「…おやすみ、グリム。」
分からない場所に来たけど、何とかなるそんな気がして眠りについた。
俺達は、謎の石像の前に居る。
何故居るかと言うとー。
今から数分前、寝室に学園長が来た。
「おはようございます!仕事ですよ。」
「はい?」
「全く…、忘れたのですか?
貴方達には治安維持を務めさせると。」
ああ、思い出した。
そんな話だったな…。
「しかし!貴方を認めて無い方も多くいます。そこで!」
…嫌な予感がする。
「学園の生徒の悩みを聞く事で、貴方の事を認めさせる事にします!まずは最初のステップとしてこれ。」
バケツと、モップ?
「ハイ、この学園にある石像の掃除をお願いします。」
「…つまり、雑用をやれと?」
「あの石像は、とても大事な物です。それを掃除する事は信頼に繋がる事ですよ。」
深い溜息を吐く。…断れなそうだな、
コレ。知っている、こういうタイプは何を
言っても聞いてくれないんだ。
「…分かりました、グリム起きて。」
そう言って、イビキをかいているグリムの頬を引っ張って起こした。
「ふみゃゃああ〜〜〜!!」
…そんなに驚かれるとは、思わなかった。
とりあえず挨拶をするか。
「おはよう、グリム。」
「おはよう、じゃねーんだゾ!!」
「もしかして、痛かった?」
「痛かったに来まってんだゾ!!」
「次は、冷水を浴びさせて…。」
「そんな事したら、オレ様の火が
消えるんだゾ!!」
「それもそうだ。」
学園長は、埒が明かないと判断して会話に入って来た。
「コホン!グリムくん!貴方には、石像の掃除をして貰います!」
「なんでそんな面倒くさい事しないと行けないだゾ!!」
「貴方達は、学園の生徒に認められて無いからです。その最初の一歩としてね。」
「納得行かないだゾ〜〜〜!!」
「グリム諦めて。この手の人は、何言っても聞かないよ。」
「…貴方、本人を前に悪口を言う癖があるのですか?」
聞こえない様に喋っていたつもりだが、聞こえていた様だ。
そんなワケで、学園長に雑用を無理矢理押し付けられ、石像の前にいる。
「うう〜〜、なんでこんな事しないと行けないんだゾ!!」
わかる、あの人はズルいタイプの大人だから断った所で色々押し付け来るんだろうなぁ。面倒くさいのはとっと終わらせるに限る。そう思ってグリムに言った。
「まあ、学園長命令だし。とっとやろう。」
始めようとしたが、視線が気になる。目を合わせると、凄い勢いで顔を逸らされた。
「アイツだろ?
レオナ先輩に無礼な口聞いたの…。」
「レオナ先輩に睨まれても、逆に睨み返したとか…。」
「俺は、殴ったって聞いたぜ!!」
「俺は、齧ったって!!」
「「「「コエ〜〜〜!!」」」」
…何、その噂。
俺に対する悪い噂が流れているのか。
見られているのに気が付いたのか、生徒は慌てて過ぎ去って行った。呆然としていると、肩を叩かれた。振り返ると、なんかチャラい男がいる。…雰囲気が蓮に似ていて、苦手だ。
「昨日の騒動見たんだけど、アンタ凄いな!」
「えっと…、どちら様?」
「ああ、オレ?エース・トラッポラ。」
「よろしく、トッポギくん。」
「誰がトッポギだよ!見ていた時から思っていたけど、相当な天然だな!アンタ!!」
…やっぱり、蓮に似ている。苦手かも知れない、彼は。
「それで、えーっとトッポギじゃなくて…。」
「エースでいいわ。アンタにトラッポラとか言わせると永遠にトッポギって言いそうだし…。」
失礼な、そんな事は無い。
無い筈だ、グリムに聞いてみるか。
「そんな事無いよね?」
「絶対言うんだゾ。」
「…。」
信頼が無い、酷い。
「で、ここで何してんの?」
「ああ、実は…。」
エースに事情を話した。
「成る程ねぇ、だからグレート・セブンの石像を。」
「グラニュートウの石像?」
「ちげっーわ!!どうしたらそう聞き間違えるんだよ!!」
だってここ、料理人を育てる学校でしょう?なら、グラニュートウの石像があってもおかしくないと思う。グリムも思うよね?
「なんだ、そのグレート・セブンの石像って分からないんだゾ!」
…ちゃんと名前言えてる。聞き間違えたり、勘違いするの俺だけか。そう考えていたが、冷ややかな視線を感じてその先を見つめると、馬鹿にした様な顔をしたエースがいた。
「アンタら、グレート・セブンも知らないわけ?」
この手の奴の挑発に乗っては駄目だ。
だから、素直に聞く。
「…知らない、だから教えてくれる?」
エースは俺の態度に驚いた様で、頭を掻きながら溜息を吐いた。
「調子狂うんだけど!!」
「ごめん。」
「謝んな!
こっちが悪いみたいになるじゃん!」
…どうしたらいいんだろう。相手の顔を見て、いつも謝ってばっかりだった。彼にはこの対応は、よく無かったみたいだ。エースの様子を伺っている俺を見て、折れた様に話してくれた。
「…この世界にかつて存在した偉大なる存在がグレート・セブンって訳。彼らは憧れの存在だよ。」
苦手って感じていたけど、エースはいいヤツかも知れない。こんな対応の俺にも親切に話してくれるんだから。我ながらチョロいヤツだと思うけど。せっかくだし、疑問に思っていることも聞くか。
「じゃあ、寮もグレート・セブンと関係あるの?」
エースはそれを聞いた途端に目を細めながら、こっちを見定める様に見て来た。
「なんでそう思った訳?」
…前言撤回。エースはやっぱり苦手。
「ここに来るまで、学生の制服の色が違ったから。学生の制服の色が、この石像の数と
一致すると思ったんだ。」
エースは、関心した様に俺を見た。
「…ふーん、ただの天然って訳じゃ無さそうだな。…そこの狸と違って!」
あ、グリムを煽って来た。
グリム耐えられるかな。
「なんだと〜〜〜!!」
無理だな、コレは。
「フナ〜〜〜!!」
グリムが火を吹いた。
うん、危ないからやめて欲しいけど。
無理だろうな…。
「うわっ!!あぶねぇ!!」
エースは、そう言って反撃して来た。
なんだ?アレ?
「うぐぐっ〜〜!!生意気なんだゾ!」
エースとグリムのやり取りを見て、
辺りが野次を飛ばし始めた。
「なんだ?喧嘩か?」
「やっちまえ!!」
…この学園、治安最悪。
学園長が治安維持に任命したのも分かる気がする。2人の喧嘩?は終わらない。それをぼんやりと眺めていた。…あ、今鳥が飛んでいたな。何の種類だろう?
「くらえ!」
「そんなん風で矛先を変えてやれば…
そら!」
エースのこの行動が不味かった。
石像が丸焦げになる。
具体的には、赤い服が特徴的な像が。
エースの顔が真っ青になる。
「ハートの女王の石像が黒焦げに!」
成る程、アレはハートの女王って言うのか。
ん?ハートの女王?その名前、『ふしぎの国のアリス』のヴィランズの名前だったよな。石像をよくよく見ると、ディズニー映画のヴィランズぽいな、全員。そんな事を考えていたら大声が響いて来た。
「こらー!!なんの騒ぎです!!」
あ、コレは怒られるな。
「げッ!学園長…」
2人は一目散に逃げようとしたが、学園長は鞭でしばいていた。2人の悲鳴が響き渡る。
…見た目も極まって、変態ぽいな。
やっぱり。
黒焦げになった石像をショックを受けながら見ている学園長だったが、暫くしてから俺らの方を見て言った。
「グレート・セブンの像を丸焦げにするなんて!よっぽど退学にさせられたいと思います。…それからユウくん!」
「はい?」
「貴方、治安維持を頼んだでしょう。
何故こんな事に?」
いや、いきなり喧嘩?が始まったし。
「さぁ?最初は可愛い口喧嘩だったので…。」
学園長は、溜息を吐いた。
「3人には罰として窓拭き掃除100枚の刑を命じます!」
成る程、そう来たか。
「まぁ、100枚ならマシかな。」
エースは、あり得ないといった顔をしながら言った。
「マジかよ!?」
「罰ゲームで、500枚とかあったし。」
どうやらエースは、そんな環境が想像出来なかったらしい。
「どんな環境だよ!?」
アレは散々だった、1人でやらないといけ
なかったし手が死にかけたし、帰りが遅い事で叔母さんに怒られるし。思い出に浸っていたら、エースが同情した様に言ってきた。
「…なんか分からないけど、お前に比べれば100枚とかマシな気がしてきたわ。」
学園長は俺らの話が纏まったと考えて
告げた。
「…話がまとまった様なので、放課後大食堂に集合、いいですね。」
グリムはぶつぶつ文句を言っていた。
そして、最後に呟いた。
「昨日から散々なんだゾ〜!」
大食堂の机に死体が一体。グリムである。
グリムはよれよれになりながら、起き上がり言った。
「一日中掃除してもうクタクタなんだゾ〜…ユウは、500枚だったか?信じられないんだゾ!!」
そんなに褒めないで。褒め慣れて無いんだ。
「照れるな。」
だが、グリムはそんな俺の返答に盛大に突っ込んできた。
「褒めてないんだゾ!!」
褒めてないのか、そうか…。
それはともかく。
「楽な方だったよ。」
窓拭きとか、雑用とかめちゃくちゃ任されていたと言うか、掃除を全部任されて全員帰るとかあったし、掃除は得意な方だ。
「それにしてもあのエースってヤツ、遅いんだゾ、オレ様を待たせるとはいい度胸だ!
イライラ!」
イライラって口に出すヤツ初めて見たな。
まぁ、あのタイプは逃げ出す可能性があるし。エースが逃げた可能性もあるけど、来る可能性もあるし待ってみるか。
だが、いくら待っていてもエースは
来なかった。
「…いくらなんでも遅すぎるんだゾ!」
「…逃げたかな、やっぱり。」
グリムは、俺を殴り掛かる勢いで
言ってきた。
「今、やっぱりって言ったんだゾ!?」
「逃げる可能性もあると思って。」
グリムは、俺のお腹の辺りをぽかぽかと
殴りながら言った。
「最初に言うんだゾ!?」
…痛くない、むしろ肉球が気持ちいい。
「ごめん。」
グリムは、プンスカしながら走り出した。
「…グリム?どこに?」
「エースを、探すんだゾ!とっ捕まえて
窓掃除させてやるんだゾ!」
「居場所は?分かっているの?」
「うっ!」
やっぱりか、なら人に聞くのが早い。
「人に聞いてみよう、幸いこの大食堂には
人が沢山居るし。」
あ、レオナさんだ。
知り合いだし、聞いてみるか。
「こんにちは、レオナさん。」
「よぉ、ユウ。…と狸。」
「狸じゃなくて、グリム様なんだゾ!」
レオナさんは興味なさげにグリムを見ていたが、レオナさんの元に走ってくる者がいた。
「レオナさーん!お待たせしました!
…って噂の新入生!」
その者は、レオナさんと同じ様に耳が
付いていた。
「えっと…。」
「オイ、ラギー、自己紹介してやれ。
混乱している様だからな。」
「ふむふむ、レオナさんが気に入って
いるって噂は本当だったんッスね。」
ラギーと呼ばれた少年は、レオナさんに
睨まれた。
「ハイハイ、分かりましたよ。
オレは、ラギー・ブッチ。
ラギーって呼んで下さい、ユウくん。」
随分とフレンドリーな人だな。
「キミの噂は、聞いていますよ。
レオナさんを殴った!とか、
噛んだ!とか。」
え、なんだその噂。…朝も避けられていたし、俺の凶暴なイメージが広まっているワケ?まぁ、弱いとかよりはいいか。そっち方面だと、暴力振るわれるし。凶暴なイメージが広まっている間はそういう人近づかないだろうし。でもあれだな、凶暴なイメージずっと持たれたるのもイヤだし、訂正しとくか。
「そこまで凶暴じゃないです。」
「そして、噂通り天然っと。」
…なんか、探られている気がする。
この学園多いな。エースにも見定める様な目で見られたし。まぁいいや、聞きたい事があるし。
「あの、レオナさん、ラギーさん。
聞きたい事があるのですがー。」
レオナさんたちに情報を聞いて、教室に向かうことにした。ラギーさんは中々がめつい性格のようで物を要求されたけど。仕方なく、学園長に貰った飴を渡した。学園長に貰った飴だと言ったら最初は、「コレだけッスか〜。」と言っていたラギーさんの目が変わり、情報をくれた。
「学園長の飴ってだけですよ?」
「学園長がユウくんに「なにか」をあげて
いたって場所が大事なんッスよ〜。」
ああ、そういうことか。
「学園長が「特定の生徒に贔屓をしていた。それも曰く付きの生徒に。」これを知った生徒は学園長に反感を持つってことですね。
つまりはこれを使って学園長を脅せる。」
ラギーさん達が俺を見る目が変わった。
「…ユウくんって、ただの天然ってワケ
じゃないッスね。」
「?どういう意味ですか?」
レオナさんは、意地悪そうな顔を
しながら言った。
「…テメーは、場合によっては一番厄介な敵になりそうだってことだよ。」
ラギーさん達と別れた際の警戒した目付きを俺は思い出しながら、エースがいるという教室に辿り着いた。グリムは扉を勢いよく開けると叫んだ。
「オラァ!エースはどこだ!
隠し立てするとただじゃおかねーんだぞ!」
…なんか、借金の取り立てみたいだ。
しかし、誰もいなかった。
「…って、誰もいない〜!?」
グリムがショックを受けていたら声が聞こえて来た。声がする方を見るとフヨフヨと浮いている絵画が喋っていた。当然グリムは驚いた様で、気絶しそうな顔をしていた。
「ふぎゃーーー!!!絵がしゃべった!?」
喋る絵画は、当然の事の様に言った。
「なんだい?しゃべる絵画なんか
この学校じゃあ珍しくないだろう?」
…まぁ、ゴーストがいる世界だし。
絵も喋るか。
「こんにちは。」
「やぁ、こんにちは。」
「いつも思うけど、普通に
話してんじゃねーんだゾ!!」
「そんな事より、聞く事が
あるんじゃない?」
グリムは、思い出した様に喋る絵画に
聞いた。
「エースってヤツを探しているんだゾ。
顔にハートが書いてある、モサモサ頭の
ヤツ!」
喋る絵画は、見たことを告げた上で寮に
戻った事を告げた。当然、グリムは怒って
いた。
「どっちに行ったかわかるか!」
…この怒り具合から、エースを殴らないと
いいな。
「寮への扉は東校舎の奥さ。」
成る程、さっきレオナさん達に学園の事色々聞いておいてよかった。…親切に答えてくれたのは、目的がありそうだけど。
まぁいいか、今必要なのは、エースを追う事。それだけだ。
辿り着くと、いた。
エースだ。
「窓拭き100枚なんて…、アイツには少しだけ悪いけど。狸はいいや。やってやれるか。」
あ、一応罪悪感は少しはあるんだ。
「こーーーらーーー!!!」
でっか、声。
どんだけ、不満溜まっていたんだ。
エースは、しまったという顔をしていた。
「げっ!見つかった!…何だよ、文句あんのかよ。」
俺に向かって気まずそうに呟いた。
「別にないよ、来なかったら全部1人でやるつもりだったし。」
そう言った途端にエースの顔が曇った気がした。気のせいか?グリムは、俺の対応に対してダメ出しをしてきた。
「ダメなんだゾ! 甘やかしたら!」
そう見える?甘やかしたつもりは無くて、俺1人でやれば済む話だって思ったんだ。今までだってそうだったし。だから、それをグリムに伝えた。
「そんなつもり無いって。ただ、慣れているんだ。1人で何かをやるのってさ。」
エースは、そんな俺らのやり取りを見ながらイライラした様に言い放った。
「…そ、分かった事があるわ。オレ、アンタの事嫌いだわ。」
嫌い、ウザいそんな事言われ慣れている。
だから、いつもの調子で言った。
「そっか。」
エースは、俺になにかをを言いかけて寮の道に向かって歩き始めた。
「ッ!…帰る。」
帰ろうとするエースをグリムは止めようとし、声を掛けた。
「待つんだゾ!」
だが、エースはこちらを振り向きも
しなかった。
「くっそ〜、あのままじゃ捕まらないんだゾ!」
すると、鏡から真面目そうな少年が
出てきた。
グリムは大声で叫んだ。
「オイ!そこのニンゲン!」
グリム…。いきなりニンゲンは失礼だって。ほら、固まっている。だがグリムはそんな相手の様子をお構い無しに喋り続けた。
「ソイツを捕まえるのを手伝ってくれ!」
混乱している様だ、そりゃあそうだろう。
いきなり手伝えって言われてもー。
「人を捕まえる?足を止める、いや縄で拘束する?」
マジか。グリムの難題に対して必死になって考えていた。いや…、そこまでマジにならなくてもいいから。エースを捕まえようとしてるのも、こっちの都合だし。
「それとも…えぇっと…」
そんな彼に対してグリムが無理難題を吹っかけてきた。
「なんでもいいからぶちかますだゾ!
早く!」
無理だろう、今回は諦めてー。
「なんでもいいから、いでよ!」
何、その適当な感じ。
「重たいもの!」
そんなんで出るはずがー。
「ぐえぇっ!ナンダコレ!?鍋!?」
…そんなのあり?
グリムは楽しそうに笑っているが、
心配だな。鍋の下敷きだし。
「ちょっと、やりすぎたか…?」
ちょっとどころじゃなくて、
かなりだと思う。
無事に鍋の下から抜け出したエースは、
げっそりした顔で言った。
「酷い目にあった…。」
流石に心配になってエースに声を掛けた。
「大丈夫?」
だが、エースは俺の顔を見ると顔を背けた。
…完璧に嫌われたな、コレは。
真面目そうな少年はエースに逃げていた理由を聞いていた。エースは、拗ねた様に話し
始めた。
「そこの狸と戯れていたら、グレート・セブンの石像がちょっーと焦げちゃって、罰則として窓拭き100枚の刑が与えられただけ。」
真面目そうな少年は、驚いていた様だった。
「なっ!?グレート・セブンの石像を!?
それはダメだろう!…それと逃げるのに何か関係が?」
エースは、当たり前の様に言った。
「めんどくさいじゃん、100枚とかさ。」
…100枚って面倒くさいレベルなのか。簡単なレベルだって考えていた。そんなことを考えていたが、真面目そうな少年は「ダメだろう、それは!!」とエースに言っていた。
そんな真面目そうな少年に対して、エースは溜息を吐いた。
「さっきから、ダメダメばっかりじゃん。
なら、なんだったらいい訳?…つーか、アンタ誰?」
真面目そうな少年は、優等生らしい回答をしていた。
「ルールや、校則は守るべきだ!
後僕は、デュース・スペード。
クラスメイトの顔ぐらい覚えたらどうだ。」
その優等生らしい回答がエースには気に食わなかったらしい。デュースを煽っていた。
「真面目だな、アンタはオレの事分かっている訳?」
真面目ぽいデュースは、エースの質問に真面目に答えようとして答えに詰まっていた。
「えっと…。」
エースは、呆れながらデュースを見ていた。
「分かってないじゃん。」
エースの視線に耐えられなかったのか必死になって誤魔化していた。
「と、とにかくハーツラビュル生として!」
そんなやり取りをしている間にエースは違和感を感じ、俺に聞いてきた。
「…オイ、あの狸どこ行った。」
本当だ、グリムがいない。
こういう場合、ロクな事にならない。
グリムの声が響く。
「へっへーん!あとはオマエらに
任せたんだゾ!」
逃げているグリムを見ながら、
エースは憎らし気に言った。
「あんにゃろう〜オレを身代わりに
したな!?」
まぁ、自分1人でやればいいかなんて考えていたらエースに睨まれた。
「…アンタ、まさか全部1人でやればいいとか考えてないよな?」
「当たり、グリムは逃げちゃったし、エースもやりたくないでしょう?俺別に苦痛でもないし、1人でー。」
言い終わる前に、エースがデュースに向かって話しかけていた。
「オイ、ジュース!」
「デュースね、エースも俺の事言えないじゃん。」
「うっせ!あの狸捕まえるの手伝え!」
「なんで僕が!?」
「そっちは、魔法使えないらしいから
戦力外!」
そう、こっちで住むにあたり学園長が軽いテストをしたのだが、結果は魔力?とか言うのが無いのが判明した。それもあって、周りに認められて無い。学園の中には俺に対して罵倒してくるヤツとかいるし。…あるとき、謝ってきたけど。今なら分かる。噂のせいだな。凶暴なイメージが広まったから謝ってきたんだ。この学園、力=正義みたいな場所あるしな。そんなことを考えていたらエースがデュースの名前を間違えたまま、デュースに急ぐ様に言っていた。
「行くぞ!ジュース!」
それを聞いたデュースは、エースに対して名前の訂正を必死になってしていた。
「誰がジュースだ!デュースだ!」
…やっぱりエースも、人の事言えない。
そんなワケでグリムを追いかけていたのだが、意外にすばしっこく中々捕まらない。
「なんで、僕がこんな事を!!」
そんな事を言いながら、ついて来てくれる
デュースはいいヤツだと思う。
グリムは、絶対に捕まるもんかと言う意思を表明する為か叫びながら走っていた。
「ダレが捕まるもんか〜!!」
疲れてきた様に見えたエース達に対して、グリムはまだまだ元気だ。…こんな思いしながら、グリムを捕まえなくてもいいんじゃ
ない?
「俺が、窓拭き1人でやれば済む話だと思うんだけどな。」
「はぁ〜?」
まただ、エースがキレた。キレる理由が分からない、楽できるじゃないか。俺は大変だけど、それだけだ。みんな誰かに押し付けて、楽して生きている、当たり前だ。だから、
エースがキレる理由が分からない。
「本当にお前、腹立つなぁ!!」
「ごめん。」
「ッ!!」
またエースがキレると思っていたが、
デュースが横から割り込んできた。
「ケンカなら、後にしてくれないか!?」
「してねーし!」
「してないよ。」
「息ピッタリか!!」
すると、グリムが火を吹いてきた。
ギリギリの場所でエースが避ける。
「あぶなっ!」
このままでは、グリムは一生捕まらないと
デュースは判断したのか不思議なペンを出してきた。…アレは確かマジカルペン。魔法を使う為の道具だっけ。そしてここは魔法士を育てる学園だとか。よかった、レオナさんたちに色々聞けて。聞けなかったら一生、料理人を育成する学園だって勘違いしていたところだったよ。とにかくこの世界は魔法が使えて、俺は使えない。基本使えないヤツは、人権が無い。まぁ、そんな魔法をデュースは発動させようとさせている。ずっと走っているよりは魔法で捕まえるのは、有効かな。
エースも魔法を使うのは賛成のようだった。
「よし!合わせろよ!」
だが、合うことは無くグリムの横を通り抜けた。…魔法が上手く合えば、デュオ魔法って言って強力な物になるって聞いたけどダメだったみたい。でも魔法を放ったのはいい方向だったみたいだ。何故なら、魔法を放った際にグリムも逃れる為に魔法を放った。そのときに気が付いたことがある。
2人にも伝えておくか。
「このノーコン!!」
「なんだと!?」
今にも殴り合いを始めそうな2人をなんとか
止めながら、言った。
「2人ともそのぐらいで。
…グリム見ていて気が付いたんだけどさ。」
「なんかあるのか?」
エースは、グリムの’くせ’に気が付いて
無いみたいだ。なら、やっぱり伝える必要があるな。
「目をつぶりながら吹いているみたいなんだ。…火。だからグリムが目を瞑っている時がチャンスなんじゃ無いかな?」
2人はニヤリと笑った。…悪い顔してるなぁ。
「成る程、ならアイツが目を瞑っている間に魔法で火の方向を変えて…。」
「僕がこの網で捕まえる!」
グリムを捕まえる方法は分かった。ならば後は罠を貼り、グリムを待つだけだ。
グリムは、付いてこない俺らを見て油断しているようだった。
「アイツら、来ねーな。ニシシ!
諦めたんだゾ!!」
「んな訳あるか。」
エースはそう言って、全員でグリムの前に
現れた。
「観念しろ!…えっと狸でいいんだよな?」
デュースは、名前を狸と誤解している様だった。…まぁ、ずっと狸って呼んでいたし、しょうがないか。グリムは狸と間違えられたことに対して怒っており、訂正する様に求めていた。…会うたびに色々な人が狸って言っているしグリムはもう自分の見た目が狸に似ているって諦めた方がいいと思う。
「そ、そうか、それは済まない。」
デュースは、律儀に謝っていた。
「分かればいいんだゾ!しかし、それとこれとは話は別!捕まってやらないんだゾ!」
グリムは、そう言って火を吹いて来た。
目を瞑ったまま。
「エース。」
「分かっているつーの!!」
エースは、魔法で火の方向性を変えた。
魔法で、火の矛先を変えられたことにより想像した場所に火が飛んで行かなかったことにグリムは驚いていた。
「フナッ!?」
それを逃さないとばかりにデュースが駆け出し、網を被せる。
「今だ!!」
しかしー。
「こんなので、捕まるグリム様じゃ
ないんだゾ!」
そう言って網を火で燃やした。
「しまった!」
グリムは駆け出した。
「やっぱり来ると思った。」
そう言って、グリムを捕まえた。
「フナッ!?ユウ!?
なんで、いやがる!?」
「グリムなら、捕まえても火を吹いて逃げると思って。なら、ここで待ち伏せしていた方がいいでしょう?」
「離せ〜〜〜!!」
ジタバタ暴れるグリムをしっかり捕まえていたら、2人が遅れて来た。エースは、拗ねた様に言った。
「…最初から予想していたのかよ。」
グリムならどんな手を使ってでも逃げると
考えて、いくつかプランを考えていただけ
だよ。
「あくまで予想の1つだけどね。」
デュースは、ボソリッと呟いた。
「なら、僕らに話してくれても…。」
そうなんだけどさ…。まずはー。
「敵を騙すには、まず味方からって言うでしょう?」
エースとデュースは、顔を見合わせて溜息を吐いた。エースは俺をジト目で見ながら
言ってきた。
「アンタ、性格悪いってよく言われない?」
エースに褒められてしまった。
だから、素直にお礼を言う。
「ありがとう。」
エースとデュースが同時に突っ込んできた。
「「褒めてない!!」」
グリムを捕まえた後は、とりあえず大食堂に行こうと言う話になり、大食堂に向かって歩いていた。
「大人しくしていてね、グリム。」
「…。」
「なぁ、本当に大丈夫か?」
デュースは、不安そうにグリムを
見つめていた。
「何が?」
「何がじゃ無くて、ソイツまた逃げ出したり…。」
その言葉がフラグとばかりに、グリムは俺の手からするりと抜け出して逃げ出した。
「あっ。」
「あっじゃねぇ!とりあえず追いかけるぞ!」
エースはすぐさまにグリムを追いかけて、
俺とデュースも後に続いた。グリムは、大食堂のシャンデリアに登っていた。エースと顔を見合わせる。
「どうすんだ?アレ?」
「流石に危険だし、グリムを安全に降ろす
方向を考えて…。」
けれども、デュースは想像よりヤンチャ
だったようだ。
「どうする?そうだ!投げれば!」
そう言うとデュースは、マジカルペンをエースに向けていた。
「ハッ?」
「えっ?」
混乱して止める間も無く、魔法でエースを
シャンデリアに向かって投げた。…鍋とか出てくる時点で、変なヤツだって疑うべきだった。叫び声がし、シャンデリアが落下する。
これ、退学ルートかな。居場所っていうか、帰れるか分からないけど。もちろんエースは、デュースのあり得ない行動に対して怒っていた。一通りデュースに文句を言った後に、落ちたシャンデリアを見ながらエースは呟いた。
「学園長に知られたら…。」
「知られたら……なんですって?」
振り返ると、ドス黒いオーラの学園長がいた。…ヤバい、めちゃくちゃ怒っている。
「もう許せません。全員、即刻退学です!」
全員のショックは大きい物で、特にデュースは大きかった。
「そんな! どうかそれだけはお許しください!僕はこの学園でやらなくちゃいけないことがあるんです!」
その割には、問題行動が多かった気がする。
…巻き込んだのは、俺らなのでなんとも言えないが。退学になったら、どこに帰るんだろう?一応聞いておくか。
「あの、学園長。」
「なんですか!ユウくん!
私、今機嫌が悪いのですが!!」
「俺って、退学になったらどこに
帰るんですか?」
「…成る程、確かに途中でしたね。
鏡の間に行きましょう。」
「鏡の間?」
「貴方がレオナくんに初めて会った
場所ですよ。」
あそこか。
「貴方達も付いて来なさい。」
レオナさんとあった場所に着く。
やっぱり不思議な場所だ。
棺桶とかフヨフヨ浮いているし。
「闇の鏡よ、
この者をあるべき場所に導きたまえ!」
「病みの鏡?」
「漢字が違います!
貴方、闇の鏡に失礼でしょう!」
失礼も何も、鏡に向かって話しかけている方が病んでいると思うのだがー。そんな事を考えていたら、鏡に怪しい顔が出てきた。
…怪しいオッサンだな。
「なぁ、なんか変じゃないか?」
「否定はしねーが、お前の頭とどっちが
マシかな!」
「アアン!?」
あ、もう2人とも喧嘩しようとしている。
この学園って頭に血が昇りやすいヤツ多すぎでは?学園長は、そんな2人を無視して闇の鏡と呼ばれた存在に話しかけた。
「ゴ、ゴホン…もう一度。
闇の鏡よ!この者を…」
「どこにもない…」
「えっ?」
「この者のあるべき場所はこの世界のどこにも無い…無である。」
そう言われた時、なんとなく納得した。
いつも「居場所がない」って思っていたから。なくても納得だ。
「そんな事あり得ません!」
絶句している学園長の前で闇の鏡は喋らなくなった。学園長は振り返ると、聞いて来た。
「貴方、どこから来たんです?」
「日本の新宿です。
産まれた時はこんぐらいで…。」
「そこまでは、聞いて無いです!!
…帰る場所がない以上、雑用として
一生働いて貰うしかありませんね。」
「まぁ、仕方ないですね。」
「…帰れないのに、絶望して
無いんですね。」
「納得している所があるので。」
「では、ユウくんは一生雑用。
他2名は、退学と言う事で。」
学園長は話をそう纏めたが、デュースは必死になって学園長を引き止めていた。
「待って下さい!許していただけるなら弁償でも何でもします!」
あのシャンデリア、弁償できる額って感じはしなかったけど。
「あのシャンデリアはただのシャンデリアではありません。」
なんとなく話が長くなりそうだったので、
話に割り込んだ。
「つまり特別な物だから、割ったら最後って事ですね。」
「…貴方、話が長くなりそうと察して無理やり纏めたでしょう。」
「あ、分かります?」
「本当に!無礼な子ですね!貴方は!」
怒っていた学園長だが、話を進めてくれた。
「ユウくんの言う通りです。」
2人の顔が絶望に染まるが、学園長が思い出した様に言う。
「1つだけ、シャンデリアを直す方法があるかも知れません。」
2人は、バッと顔を上げて学園長を見る。
「そのシャンデリアに使われたのは
ドワーフ鉱山で発掘されたもの。」
ドワーフ鉱山?また知らない単語が出て来たな。ドワーフって名前が付いているし爺さんが働いていそうだけど…。
「同じ性質を持つ魔法石が手に入ればー。」
学園長が全てを話し終わる前に勢いよく、
デュースは言った。
「行かせて下さい!」
随分と乗り気だな、デュース。
「ですが、鉱山に魔法石が残っている確証はありませんよ。」
正直言って、賭けだと思う。
それでも、デュースは学園に残りたいんだ。
俺は、学校とか嫌な思い出ばっかりで辞めたいとかしか思ってなかったけどデュースは違う。ならー。
「俺も、行きます。」
学園長は、俺が名乗り出たことに対して驚いているようだった。
「…貴方が名乗り出るなんて。
珍しいですね。」
そうかな?これでも俺なりに責任は感じてるし。だからー。
「大した理由じゃないです、ただ巻き込んだのは自分なのでその責任は取るつもりです。」
「ありがとう…。」
デュースが嬉しそうに微笑み、
エースが、困った様に溜息を吐いた。
「エース?」
「マジで!こんなのキャラじゃ無いんだけど!!行ってやるよ!」
…エースは、来ないかと思っていた。
これは予想外だ。
学園長は俺たちを見渡し、確認をする。
「つまりは、全員で行くと言う事で?」
「なんかそういう話になったみたいです。
…こうして、ドワーフ鉱山に3人と猫1匹が行く事になったのである。」
「猫じゃねぇ!!グリム様だゾ!!」
俺が勝手に付けたナレーションに対して
突っ込むのでは無く、猫扱いされたことに対してグリムは怒っていた。
「勝手にナーレションを付けるな!」
デュースは、正常に突っ込んでくれた。
学園長が神妙な顔で告げてきた。
「期限は、明日の朝まで。
それが出来なければ…。」
「俺は一生雑用、2人は退学ですね。」
「分かっていれば宜しい、ドワーフ鉱山までは扉を利用すれば一瞬でしょう。」
学園長は、そう言って鏡の方を見た。
デュースは気合いを入れて、鏡を見ながら
言った。
「よし!行くぞ!」
その横でエースとグリムはお互いを貶し合っていた。
「足引っ張っんじゃねーゾ!」
「お前がな!!」
先行きが不安だ。そう思って小さく呟いた。
「大丈夫かなぁ…。」
そんなことを考えていたら、学園長に呼び止められた。
「ユウくん。」
「何ですか?」
「貴方なら大丈夫でしょう、3人を纏められる。」
自信ないけど。寧ろ振り回される自信がある。なので、学園長に理由を聞く。
「…どうしてそう思うのですか?」
学園長は悪戯ぽく笑って、答えた。
「予感、ですかね。」
エースが俺を急かす声がした。
「オイ!早くしろ!」
後ろを振り返ると、全員俺を待っていてくれたようだ。流石に待たせるは悪いし、時間もない。そう思ってエース達の場所に急いで
行った。
全員揃っているのをデュースは確認してから、闇の鏡に向かって叫ぶ。
「闇の鏡よ!
僕たちをドワーフ鉱山に導きたまえ!」
すると、鏡が揺めき光った。
あまりの眩しさに目を細める。
目を開けるとー。
学校とは違う場所にいた。
「ここがドワーフ鉱山…、
なんか野宿するのに良さそうだね。」
そんな俺に対してデュースは
突っ込んできた。
「寝るの前提で話すな!!」
「なんか暗いし、寝るのに良さそうだよ?」
「焦れ!君は一生雑用だぞ!!」
一生雑用…ね。今までと対して変わらないし苦痛じゃない。今回来たのはー。
「俺は一生雑用でも大丈夫。苦痛じゃ無いしね、今回手伝うのもデュースとエースの為。
2人共、退学は困るんでしょう?」
エースは、ずっとムスッとした顔をしている。
「…まぁ退学は嫌だけどよ。マジで言ってんの?雑用で良いとか。」
帰る場所もない、帰っても地獄。なら雑用なんて軽いもんだよ。
「うん。」
俺がそう答えたら、エースは冷めた目をしながら言ってきた。
「…段々分かって来たわ、アンタの事がな。」
何が分かったのだろう?聞く前にエースは、進んでいた。
「あっ!奥の方に家がある。話聞きに行ってみよーぜ。」
エースを観察していたが、いつも通りだ。
…分からない、エースが。
分からないなら人に聞いてみるのが一番か。デュースは、幸い話しやすいし聞いてみるか。
「…デュース、俺ってエースを怒らせる事したかな?」
デュースは、エースに続いて歩きながら真剣に答えてくれた。
「分からないな、僕は君たちとそんなに仲がいい訳じゃ無いし。」
「だよね、ごめん。」
俺の方を見ながら、デュースは言うか悩んだ様な素振りを見せた後に覚悟を決めて言ってきた。
「ただ…、その自分を低く見る癖は直した方がいいぞ。」
それだけ言って目的の家に入った。
…低く見ている?自分を?
当たり前じゃ無いか。
だって評価される所なんかー。
そう考えていたが、デュースの言葉で
我に帰る。
「…空き家か。荒れ放題だ。」
その後も調べたのだが、誰もいなかった。
エースがなにかを見つけたらしく近づいて見てみた。
「なんか机とか椅子とか全部小さくねぇ?」
確かに。人間用の椅子って感じじゃ
ないよね。エースは、椅子の数を数えて驚いていた。
「いち、に…7人!多っ!」
小さい上に7人?なんかディズニー映画の『白雪姫』の小人の家みたいだな。こんなにボロくなかったけど。とりあえずここでこうしても仕方が無いと言う話になり、炭鉱に向かう事になった。
炭鉱は随分と暗かった。
グリムはビビッているようであった。
「こ、この真っ暗な中に入るのか!?」
エースはそんなグリムをからかっている
様だった。
「ビビッてんのか〜?」
「そ、そんなことないんだゾ!!」
2人の喧嘩が始まりそうだったので俺が率先して入るかと考え、入る為に片足を炭鉱の中に入れた。俺が1人で入ろうとしているのに
エースが気が付き、止めてきた。
「待て待て!何入ろうとしてんの!?」
だってグリムは入りるのイヤそうだし、
このままだと埒が開かない。
「ん?グリムは入りたくないみたいだし、
ならー。」
エースは、ほぼヤケクソ気味に叫んだ。
「あーもー!!一緒に行く!!」
それに続いてデュースも付いて来てくれた。
「1人だと危険だと思うが?」
さっきまで怖がっていたグリムだが、
気が付いたら先頭に立っていた。
「子分を守るのも務めだからな!!」
「…前にも言ったけどグリムの子分になる
つもりは無いんだけどなぁ。」
「なんだと〜〜!?」
驚いた、こういうのって率先して先に行かされたり、行くって言ったら喜ばれるもんじゃないのか?一緒にって考えた事とか、そもそも一緒に行こうって言われた事が無い。なんだろう?なんか、ぽかぽかする。分からないけど。
炭鉱の中は、随分とキラキラとしていた。
…なんだ?宝石?
デュースが何かに気が付いた様でマジカルペンを構える。エースもデュースの真剣な顔を見てマジカルペンを構えた。2人が見ている先にいた存在はー。ゴーストたちだ。ゴーストたちは愉しげに近づいて話しかけてきた。
「ヒーヒッヒ!10年ぶりのお客様だあ!」
「ゆっくりしていきなよ。永遠にね!」
うーん、これは話が通じないタイプ。
「倒そう。」
俺がそう言った途端にデュースは、焦った。
「早くないか!?余計な力は使わず撒く方向で!!」
マジカルペン構えているし、倒すスタンスだって考えていたけど…。撒く方向か。
けどさ…。
「倒した方が早いと思うんだけど…、
永遠にとか言ってきたし。」
だが、デュースは撒く方向を譲らなかった。
「変な所で脳筋だな!?僕らの目的は!?」
目的?なんだっけ?目の前のヤツを倒すことじゃない?
「ゴースト退治。」
俺の回答は違ったらしい。
グリムたちに突っ込まれた。
「違うんだゾ!!」
「魔法石だろ!?」
あ、そうだった。その為に来たんだった。
「そうだったね。」
エース達は、疲れた様に此方を見てきた。
「もうイヤなんだが!?この天然!!」
とにかく逃げる方向にまとまったので、
逃げているのだがー。
「多いね、ゴースト。」
マジカルペンで石などを持ち上げ、ゴーストに投げて意識を逸らさせるようにしていた
デュースだがあまりの多さに根を上げて
いた。
「多過ぎだろう!!」
ゴーストって集まるとこんなに面倒くさい
んだ…。
「もうまとめて、処分出来たら…。」
デュースには、俺が呟いた言葉が聞こえていたらしい。
「だから!発想が物騒!」
そんな話をしていたら、ゴーストに
見つかった。
「いたぞ〜。」
「つかまえろ〜。」
正直、体力は無い方なのでクタクタだ。
だから言った。
「…俺の事、置いて行っていいよ。」
そう言った途端にデュースは、驚いた顔を
していた。
「俺さ、体力無くて…、
限界だし、だからー。」
世の中は弱肉強食。弱いヤツは置いて行かれて当然なんだ。俺はこの中では1番体力がなくて弱い。だから、切り捨てるのが一番だ。
黙って俺を見ていたエースだったがー。
「…。」
次に取った行動は予想外だった。
「へっ?」
俺を俵担ぎして、走っている。
「デュース!狸!逃げんぞ!」
「了解!ナビは任せろ!」
「狸じゃねー!!グリム様だゾ!!
何度言ったら分かるんだ!!」
ハッキリ言って、混乱していた。
あの状況なら、見捨てるのが一番だ。
見捨てても、俺は責めない。
なのに、なんでー。
「何でって顔してんな!アンタ!!
マジで腹立つ!絶対言ってやんねーわ!!
自分で考えろ!!」
無事にゴーストから逃げ切れたので、
エースから下ろしてもらう。
…そうだ、お礼。お礼を言わないと。
そう思っていたが、謎の声が聞こえて来た。
振り返ると、頭に帽子。服はー。
「観察している場合じゃない!!
とにかく逃げるぞ!!」
デュースの言葉にエースは頷くと、
また俵担ぎされた。
…そんなに、ひ弱に見える?俺?
見えるか、全体的に細いしなぁ。
走りながら、デュースは言った。
「なんだあのヤバイの!?」
あんなのこの世界にいたっけ?
こっちにはゴーストとか喋る絵画とかいるのは知っているけど。あんなのはー。
「うん、初めて見た。
この世界だと普通なの?」
「そんな訳あるかぁぁぁ!!」
…このエースの叫び方からして、
いないぽいな。
化け物が近づいてきて、何かを呟いている。
「イジ…イシ…、ハ…ワダサヌ…!!!」
イシ、石。なら、もしかしてコイツが目的の物を持っている可能性も…。
デュース達も気が付いた様で化け物の方を
もう一度見つめた。
「ここに魔法石が!!」
「むむむむむりむり!いくらオレ様が
天才でもー。」
まぁ、無理。
相手の弱点とかわかれば、やりようが
あるけど何にも分かってないし…。
「だが魔法石がなければ退学…俺は行く!」
デュースは本気だ。でも、無謀過ぎる。
せめて何か分かってからでも…。
「カエレ!カエレ!!カエレ!!」
そう言ってデュースを攻撃しようとする。
手頃な石を見つけて、ぶつける。
「ウゥゥゥゥウォオォォ!!」
「…ここまでで、大丈夫。」
そう言って、エースから離れた。
「オイ!」
「俺が囮になる、その隙に弱点とか見つけて欲しいんだ。…じゃあね。」
あっちにはゴースト。でもエース達が逃げる時間は作れる。化け物は、目論み通り付いて来た。エースには、さっき助けて貰った。
借りは返せたかな?
そんな事を思っていたがー。
「ふっざけんじゃねー!!」
その声と共に風が化け物に当たる。
「フナ〜〜〜!」
「オラァ!」
デュースと、グリムが攻撃している隙に
エースが俺の手を引っ張って逃げた。よく見ると、エースはボロボロであり、無理して来たのが分かる。…俺、お前の事蓮に似ているって思っていたけど違うな。蓮は、こんなにボロボロになるぐらいなら俺を助けないよ。アイツとは親友だったから分かる。無謀な事はしないんだ。けどエースお前はー。
炭鉱から抜け出して、デュースは全員居るかを確認していた。
「全員無事だな!?」
全員の無事なのが分かり、デュースはホッとした。グリムは俺に近付いて来ると、今まで見た事の無い顔で怒ってきた。
「子分のくせに勝手にいなくなるなんて!
反則なんだゾ!!」
随分と心配をかけてしまった様だ。
「…ごめん、みんな。心配かけて。」
エースは、そっぽをずっと向いていた。
「…それで、どうする?アレ。」
デュースは、諦めきれないといった顔を
していた。
「諦めきれるか!
魔法石が目の前にあるのに!!」
そうは言っても、アレをどうにかしない限りはどうしようもない。あ、そうだ。
普通が無理ならー。
「魔法とかで何とかならない?」
だが、デュースは首を横に振りながら
言った。
「魔法は万能じゃないんだ。」
「そうなの?」
なんでも出来るイメージがあった。
デュースは更に説明を続けてくれた。
「強くイメージ出来なければ魔法は具現化しないし、大がかりな魔法や複雑な魔法の使用には訓練がいる。」
なるほど…。
「だからこその学園?」
デュースは俺の言葉に頷いた。
魔法は、万能じゃないか…。
相手は強大であるのに対してこちらの戦力は、0に等しい。もうデュースにー。
「あの鍋召喚してもらって、
ぶつけるしかない。」
そう言った途端にエースが閃いたといった
様な顔をした。
「それだ!!」
でもアレ咄嗟にって感じだったし…。
「デュース、もう一度鍋出せるかな?」
エースは、デュースに鍋を出す様に言った。
「おい!一回出してみろ。」
デュースは頷き、集中した。
「鍋、鍋、いや?デカイから大釜か?」
「アイツ、下んない事で悩んでんだゾ。」
グリムが呆れながら言っていたら、それはいきなり降ってきた。
「フナッ!?」
…これは調整が必要かも。
「…なんか出現までラグがあるから、俺らで調整しよう。」
エースはヤレヤレと言った顔で承諾した。
「しょうがねーな。」
そして、作戦を開始した。
まず最初に化け物を呼び出す必要があった為グリムにお願いした。
「やい、バケモノ!
コ、コココッチなんだゾ!」
どうやら成功したようで、化け物は声を上げていた。グリムはそれだけで、ビビっている様であった。
「ユ、ユウ〜!!」
グリムが心配そうに見上げてきたので、大丈夫と言う合図を送る。出てきた化け物を誘い込む様にグリムと俺は走り、化け物を所定の場所に移動させた。その化け物をエースとグリムの魔法で捕らえた。火と風の魔法によって上手く前に進めない化け物を見て、エース達はデュースに合図を送る。
「うっし!」
「頼んだんだゾ!!」
その声と共にデュースは、大釜を召喚する。
…痛そうだな。大釜によってぺしゃんこに
なった化け物を見て、デュース達は一気に
内部に侵入した。
内部のどこに魔法石があるかと思っていたが、分かりやすい場所にあった。入ってすぐの場所。デュースは魔法石があることに
喜んでいた。
「よっし!魔法石があるな!」
分かりやす過ぎるってぐらい…。
「あったね、めちゃくちゃ分かりやすい場所に。」
魔法石を取ると、外から音がする。
「…諦めてないみたい。」
グリムは震えながら、言った。
「魔法石は、回収したしズラかるんだゾ!」
エースにあらかじめ言っておくか。
「俺、そんなにひ弱じゃないから俵担ぎしなくてもー。」
…またされた、なんで?
「逃げた前科があるからな。こっちの方が安心出来るわ。」
そう言ってエースにしっかり掴まれた。
これは、逃げられない。
みんなで、炭鉱の中を走り抜けた。
光が見えてデュースもホッとした様な顔をして言った。
「ここまで来ればー。」
だが、炭鉱を抜けた先に化け物はまだいた。
エースは、冷や汗をかいて化け物を見つめていた。
「マジ…?」
さっきよりは弱ってはいるけど。
生きている。
「…やるしかないか。」
エースは、溜息を吐きながら頷いた。
「後、エース。降ろす気はー。」
「無い。」
どんだけ信頼無いんだ、俺。
エースは、俺に作戦を聞いてきた。
「で、どうやって戦う?」
そうだな…。こっちは相手を一撃で倒す力は無い。ならば、少しずつ削っていくスタイルになるだろうな。しかも使える魔法も少ないし。だから、物を使ってみたいな感じがいいかな。幸い周りに利用出来そうな物はあるし。そう思ってデュースに聞いてみる。
「そういえば、前にデュース。エースを投げる行為をしていたよね?」
エースは、俺を睨みながら言ってきた。
「まさか俺を投げるって話じゃないよな?」
「しないよ、したら俺も巻き込まれるし。」
「なら…。」
何を飛ばすんだとエースが言いかけて、
誰も居ない家を指さした。
「アレを投げて、ぶつけよう。
誰も居ないし壊しても問題無い。」
だが、デュースはー。
「無理だ!あんな重い物!」
「魔法は、イメージって話だったよね?
なら、アレはお菓子の家でめちゃくちゃ
軽いってイメージしてみて。普通の家って
思うから、投げるのが不可能だって思うんだ。」
デュースは、黙っていたがやがて決意を決めた様な顔をした。
「アレはお菓子の家、お菓子の家。
軽い、軽い!!いけえぇぇぇっ!!」
予想以上に上手く行った。家は、化け物に衝突した。
「よし!これなら!」
喜ぶデュースに油断しない様に言った。
すると、モゾっという音がして動き始める。
エースの判断は早く、化け物がこっちに向かって攻撃して来そうなタイミングを読んで
ギリギリで避けた。
「マジかよ!?アレで!?」
やっぱり相手は一撃では倒れてくれないみたいだ。ならー。
「エースと、グリムは風と火の合わせ技で
攻撃して。」
「そんなんでー。」
中々決断をしないエース対してピシャリと
言い放った。
「いいから早く。」
そんな俺の顔を見て、俺が本気だと感じた
エースは指示に従ってくれた。
「分かったよ!!」
「フナ〜〜〜!!」
エースとグリムのデュオ魔法は上手くいったみたいだ。…デュオ魔法って言っていいか微妙なラインだけど。タイミング合わせてって言ったけど、2人とも合わせる気全然ないからタイミング微妙にズレているし。でも、奇跡的に合ったタイミングがあり、それが化け物に効いていた。
「効いている!?」
「…やっぱり家をぶつけて
正解だったみたい。」
「ハッ?」
エースに家をぶつけた理由を説明した。
「あの家って、木で出来ているんだよ。
だから、火を加えればー。」
「成る程な…、風を加えたのは?」
「ほら料理とかの時に風を加えると、火が燃え上がるでしょう?だから更に火力を上げる為にね。」
化け物は、丸焦げにされてフラフラだった。まだ最後の一手が足りないらしい。
「デュース、あの大釜召喚出来る?」
「任せろ!」
デュースは大釜を召喚し、それによってペシャンコになった化け物。だが、まだ動こうと必死にもがいていた。まだ完全に消滅してないし、まだ足りないか。ならー。
「うん、この状況で火炙りにしよう。」
エースは、こっちをジト目で見つめて来た。
「…お前ってさ、外道ってよく言われない?」
「ありがとう。」
「…褒めて無いんだけど!!」
こうして化け物は、完全に消滅した。
ふぅ。疲れた…。ちまちま削る方法が一番だったからこの方法を選んだけどちまちま削る方法ってやっぱり疲れるな。後で学園長に報酬を貰おう。こんな化け物が出るのは知らなかった、おかげで死にかけたって。視線を感じてその先を辿るとエースが俺を見ていた。
今回、色々無茶させたし怒っているとか?
そう思ってエースに謝ろうと思って近付いた。
「…やっぱりオメェはスゲーよ。
なのに、なんで…。」
エースが何か呟いていた気がしたが、
聞こえなかった。聞こうと考えていたら
元気な声がし、振り向くと笑顔のデュースがいた。
「ありがとう!ユウ!」
「えっと?」
「君には沢山助けられた。
だから、ユウって呼んでいいか?」
…こっちは、勝手にデュースって呼んでいたのに。律儀な奴だ。
「…うん、いいよ。
これからよろしく、デュース。」
「ああ!!」
グリムは、何か落ちている事に気が付いた。
「…ン?コレ、なんだ?」
「さっきのバケモノの残骸か?」
不思議な黒い石だ、化け物の残骸なら危険なので触らない方がいい気がする。グリムは
不思議な黒い石の匂いを嗅いでいた。
「クンクン…なんだかコレ、すげーいい匂いがするんだゾ…」
イヤな予感…。その予感は当たり、グリムは黒い石を食べた。不安になったのでグリムにどこか異常は無いか聞いてみた。
「…グリム、身体に異常ない?」
グリムは目をキラキラさせながら、言った。
「ないんだゾ!!それどころか美味だゾ!」
そんなに?なんか気になってきたな…。
「そうなの?なら今度…。」
「絶対やめろ。」
「君は、変な物を口にする趣味が
あるのか?」
エースたちにめちゃくちゃ罵倒された。
…食べるのはやめておくか。
戻ると、学園長に本当に持って帰るなんて思わなかったとか散々な言われ様だった。
…まぁ、教師ってこんなもんだよな。グリム達は納得いかず学園長に文句を言っていたが。しかし、学園長に化け物の話をした途端に態度が変わった。
学園長の部屋で詳しく話す事になり、何があったか話している間、学園長は黙って聞いていてくれた。だが、話終わるといきなり泣き出した。…今の話で、泣くポイントあった?
「ナイトレイブンカレッジ生同士が手と手を取り合って敵に向かい打ち勝つ日がくるんて!」
…どんだけ協調性ないの、この学園。
いや、治安最悪なのは知っているけど。
学園長は感動しながら、言い切った。
「やはり私の目に狂いはなかった!
貴方には間違いなく猛獣使い的な
才能がある!」
…そう言う割には、一生雑用とか扱いが
雑だった気がする。
「今回のご褒美として、グリムくんには
コレを。」
そう言ってグリムの首に、何かをかけた。
「なんですか?コレ?」
「普段生徒は魔法を使う際、マジカルペンを使いますが、グリムくんは使えないでしょう?なので、特別カスタムした魔法石です。これを学園の生徒の証として。」
…と言う事は。
「今までは、学生じゃなかったと?」
学園長は、大袈裟に咳をして誤魔化した。
「ゴホン!ただし、グリムくんの監督生としてユウくんもつく事!」
…変だと思った、治安維持とか言っておきながら石像の掃除とか雑用だもんなぁ。
「…ホントウか!?」
「特別ですよ。」
グリムは、ぴょんぴょん嬉しそうに跳ねようとするがそれを止める。
「ここ、高そうなモノが多そうだしね。」
「さっそく、監督生が板に付いてますね。」
「そんな事は無いです。」
「そんな事より、ハイコレ。」
「カメラ?」
「ハイ、このカメラは特別製で被写体だけでは無く魂の一部も写す事が出来るのです。」
「で?」
「このカメラで、生徒やグリムくんを撮影し学園の生活を残してください、治安維持の
一環として。…それではまた。」
まぁ、写真ぐらいなら。というか、治安維持って言葉を使って雑用を押し付けてないか?
学園長室を出て、廊下を歩いていた。
辺りはすっかり真っ暗だ。
嬉しいのか、学園長室を出てからもグリムはずっと上機嫌だった。
「るんるん〜〜♪」
調子に乗っているなぁ、グリム。
注意深くみておくか。
「グリム、嬉しそうだね。」
「当たり前なんだゾ!
この学園に入るのが夢だったんだゾ!」
…知らなかった。あ、だからか。
「服、欲しかったの?」
グリムは出会った当時を思い出してか、
げんなりした様に言った。
「あの時は、大変だったんだゾ…。」
そんなグリムを見ながら、デュースは
言った。
「なんとなく、ユウは最初からボケてそうだな。」
「照れるな。」
「「だから、褒めてねーよ!!」」
…デュースとエースの息ぴったり。2人ってなんだかんだ言いながら今回も息が合う場面多かったし、相性はいいのかもな。
デュースがふと思い出した様に聞いてきた。
「住んでいる場所は、あの廃屋だっけ?」
「そうだよ、グリム命名で「オンボロ寮」って呼んでいる。ゴーストも一緒に住んでいて中々楽しいよ。」
エースは、呆れた顔をして来た。
「…テメェだけだろ、それ。」
「そうかな?今日のゴーストよりは温厚だし、話が通じるよ。」
デュースは、今日のゴーストの件を思い出して納得した様に言った。
「だから、今日話が通じないって分かった
途端に倒そうとしたのか…。」
「倒した方が早いよね?」
デュースも、同意してくれた。
そんな俺らに対してエースは罵倒してきた。
「この脳筋コンビ!!」
ムッ。失礼な、幽霊だけだ。
どうやらエースは相当疲れていたみたいだ。
「はぁ、疲れたからもう寝るわ。」
2人に「おやすみ」と言うことにした。
…エースは無視するかも知れないけど。
「おやすみ、エース。デュースも。」
「…おやすみ。」
だが、エースは返事をしてくれた。
予想外だ。
「おやすみ!ユウ!」
デュースも嬉しそうに返してくれた。
あんなに嬉しそうだとこっちも嬉しくなるな。消えていく2人を見送った後に俺らも、
オンボロ寮に戻る事にした。
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